分かりやすい文章って、どうやって書けばいいの?
文章を速く書くにはどうすればいいのかな?
こんな疑問を持っている方は少なくないと思います。
やっぱり文才がないと、良い文章は書けないのかな?
なんてことを思っている方もいるかもしれません。
でも、心配は無用です。
少なくとも「わかりやすい文章を速く書く」ということに関しては、特別な才能は必要ありません。
そう主張するのが、今回紹介する本『迷わず書ける記者式文章術 プロが実践する4つのパターン』の著者で、元日経新聞記者の松林薫氏です。
新聞記者が日々実践している文章術をまとめたこの本を読めば、文章を書くことに苦手意識を持っている人でも、きっと自信をもって文章を書けるようになるはずです。
なぜ記者の文章術が役に立つの?
記者ほど過酷な環境で文章を書く人はいない
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新聞記者は日々、タイトなスケジュールの中で文章を書いています。
締め切り直前にニュースのネタが入り、10分程度で記事を書かなければならないこともあるそうです。
オフィスも落ち着いて書けるような環境ではありません。
あちこちから怒鳴り声が上がり、テレビの音声が絶えず流れています。
記者はみんな文才があるわけではない
では記者には皆、文才が備わっているのでしょうか。
決してそんなことはない、と松林氏は言います。
確かにもともと文章が上手い人はいますが、各々の「書く」能力にはかなりのばらつきがあるそうです。
それでも皆、極限状態の中、正確な記事を速く書けるようになるのはなぜか。
それは、文章の型(パターン)がある程度決まっているからだといいます。
新聞記事の書き方は応用がきく
新聞記事の型(パターン)は応用がききます。
なぜなら新聞記事は、誰が読んでも理解できるように書かれているからです。
大学のレポートであれ、会社の報告書であれ、あるいは趣味のブログであれ、文章の「わかりやすさ」は非常に大事な要素でしょう。
また、新聞には、ニュースだけでなく、論説や解説、インタビューなど、様々な文章が載ります。
「これらのスタイルを真似れば、レポートや報告書からエッセイまで幅広い文章を書くことができるのです」(p.24)。
新聞の文章は無個性かもしれませんが、「型」さえ身に付けてしまえば、言葉の選び方や書く内容を工夫することで、いくらでも個性を持たせられます。
分かりやすい文章を効率的に書くには?
設計図をつくる
![](https://rourou-blog.com/wp-content/uploads/2021/04/sigmund-4UGmm3WRUoQ-unsplash-1024x768.jpg)
(良い意味での)型にはまった文章を書くには、設計図をつくることが重要です。
読者は誰を想定するのか、文章を書く目的は何か(読者を楽しませるため?必要な情報を伝えるため?)、分量はどのくらいか、締め切りはいつまでか、といった点をまずは確認する必要があります。
ブログのように分量や締め切りなどの制約がない場合でも、あえて自分で設定しておいた方が良いそうです。
というのも、分量や時間の制限があることで、文章に盛り込む材料を絞り込むことができ、結果的に引き締まった文章になるからです。
また、執筆の密度を高くすることで、文章を書く技術を早く身に付けることもできます。
設計図をつくらずにいきなり文章を書き始めるのは大きな間違いだといいます。
設計図なしでは文章としてのまとまりがなくなり、時間的にも非効率になってしまうからです。
文章の基本となる4パターン
設計図の重要な要素が文章の型(パターン)です。
本書では4つの基本的なパターンが紹介されています。
逆三角形
重要な事柄から先に説明していく形。
ニュース記事などでよく見られる。
情報を効率よく伝えるのに適している。
三部構成
序論、本論、結論の3つのパーツに分けられる。
新聞では論説文でよく使われるパターン。
レポートや論文で応用できる。
序論は主に問題提起。
本論では序論で提起した問題を分析。データや事例、エピソードを示し、それらが何を意味するのか指摘する。
結論で主張をまとめる。
起承転結
読み物での定番パターン
起は物語の導入部分。
承で導入部分の内容をより詳しく説明。
転で話題を転換し、読者の興味をかき立てる。
結はいわゆる「オチ」。
山場を起・転・結のどこに持ってくるか、書き手の腕の見せどころ。
起承展転結
起承転結の発展バージョン。
冒頭で提起した問題を「展」で論証した上で、「転」で視点を動かす。
長い読み物でよく使う。
分かりやすい文章を書くコツ
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設計図を作ったらいよいよ文章を書き始めますが、分かりやすい文章を書くにはコツがいります。
本書で紹介されているものをいくつか挙げます。
最後までざっと書いてみる
文章を直すのは後回し。
その方が効率的に書ける(ゼロから書くより、すでにある文章を直す方が簡単なため)。
1文は40~60字以内で書く
1文が長くなるほど、主語と述語の関係が複雑になるので、読みにくくなる。
シンプルに書くのが一番。
1つの文で伝えることは1つに絞る(1文1意)
1つの文に情報を詰め込み過ぎると、読みづらくなる。
40~60字以内の原則と同様、なるべくシンプルに書いた方が良い。
受け身形をなるべく使わない
行為の主体があいまいになるため、入れるべき情報が漏れてしまう恐れがある。
※ただし、絶対に受け身形で書いてはいけないというわけではありません。僕は結構受け身形で書くことがあります。
このほかにも、読みやすい文章を書くためのテクニックがたくさん書かれています(←さっそく受け身)。
それだけでなく、取材のする際のポイントや、文章力を上げるための具体的なトレーニング方法なども載っており、非常に読みごたえがあります。
この本を読みながら実際に書く練習を続ければ、基本的な文章の書き方はほぼマスターできるでしょう。
でも、一番大事なのは「内容」
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この本の面白いところは、文章の「書き方」を詳しく解説している一方で、本当に大事なのは「内容」であると、最初にはっきりと書いている点だと思います。
どれだけうまく文章が書けたとしても、内容がともなっていなければ意味はありません。
もし「書きたいこと」や「伝えるべきこと」がないのなら、インプットが足りていないということです。
そのため、様々な経験を積んだり、物事を深く考えたりすることの方が、文章術を学ぶよりよほど効果的だと松林氏は言います。
文章の「書き方」に関しては、確かにそれほど才能は必要ないのでしょう。
でも、文章の「内容」、つまり「何を書くべきか」を考え、選ぶ才能は、やはり必要なのだと感じました。
その才能を伸ばすことが、文章を書く上では最も重要なのではないでしょうか。
本書の一番最後に書かれている文章に感銘を受けたので、その部分を紹介して、書評を締めたいと思います。
文章とは表現の手段にすぎません。文章の価値を左右するのは、そこに書かれている「内容」であって、個々の表現ではないのです。「文は人なり」が本当だとすれば、文章修行とは単なる技術の習得ではなく、人生修行そのものなのかもしれません。
『迷わず書ける記者式文章術』p.197
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