「治験」というものをご存じでしょうか。
簡単に言えば、開発中の薬などを健康な人や患者に投与し、いろいろなデータを取って安全性を確かめる試験のことです。
もっとあからさまに言えば、医学の進歩のため「モルモット」になることです🐭
自分の体を実験に供することで、かなりの額の報酬がもらえます(中には数十万円もらえるものも)。
治験を経て安全性が確認されて初めて、薬が世に出ることになります。
最近は新型コロナウイルスのワクチン関連の報道で、このワードを見聞きすることが多いかもしれません。
では、治験は一体どんな感じで行われるのでしょうか。
今回は、大学院時代から治験を数回受けている僕が、治験のメリットやデメリットなどを中心に解説します。
治験を受けるまでの流れ
治験を受けるまでの大まかな流れは以下の通りです。
- 治験サイトに登録→説明会に行く
- 受けたい案件を選ぶ
- 事前の健康診断を受ける
- 診断で適格と判定→入院(通院)
それぞれについて解説していきます。
① 治験サイトに登録→説明会に行く
まずは治験の被験者を募集しているサイトに登録しましょう。
その後、事前の説明会に参加します。
入院時の流れや注意事項などの説明を受け、内容を了承することで治験に参加できるようになります。
主要な治験サイトとして、以下のものがあります。
僕はこの中の「インクロム」に登録しています。
大阪が拠点の施設なので、関西在住の方におすすめです。
興味のある方は、↓のサイトから登録してみてください。
治験で本格的に稼ぎたい方は、複数のサイトに登録するのも良いでしょう。
※ただし、一度治験に参加すると、4ヶ月くらいは間を空けないといけないので、個人的には一つでも十分かと思います(案件が豊富なサイトなら)。
② 受けたい案件を選ぶ
説明会を受けたら、参加可能な案件があるか探してみましょう。
サイトにアクセスすれば、募集している治験を簡単に見つけられます。
また、メールで募集中の案件を知らせてくれるサイトもあるので、良さそうなものをチェックしてみましょう。
③ 事前の健康診断を受ける
案件に応募したら、事前の健康診断の案内が来ます。
診断を受けて、健康状態に問題がなければ治験に参加できます。
ただし、健康診断の数値に問題がなくても、他の要因により参加できないこともあります。
主なものは年齢と体重(BMI)です。
年齢はだいたい20歳から35歳か40歳くらいまで、BMIは標準体型とされる18.5から25くらいの人でないと参加できません。
ほかにも、常用している薬がある場合や、直近で大きなけがや病気に見舞われた場合などは参加できません(タバコがNGの案件もあります)。
④ 診断で適格と判定→入院
健康診断で適格と判定されると、いよいよ入院です。
入院せず通院だけの場合もありますが、入院する案件の方が報酬は圧倒的に高くなります。
着替えなどを用意して、人体実験の治験生活に突入しましょう。
入院中の生活
入院中はずっと拘束されているのかと思いきや、意外とそうでもありません。
もちろん、案件によって様々ですが、僕が過去に受けたものは、かなり自由時間がありました。
具体的な流れとしては、薬を投与された後は、1時間から数時間おきに採血されます。
多いときは1日に10回くらい採血されることも…。
ただし、これは投与日だけの話です。
翌日以降は6時間~12時間おきくらいになるので、かなり楽です。
採血時以外は基本的に自由時間となります。
外には出れませんが、スマホをいじっていようが寝ていようが、本を読んでいようが自由です。
僕の入院していた病院にはマンガや映画のDVDなどが大量にあり、いくらでも時間をつぶせました。
また自習室もあるので、そこで勉強もできます。
パソコン一つで仕事ができる人は、自習室で仕事をするのももちろんありです。
ただし、夜間はパソコンやスマホを使えません。
睡眠時間をちゃんと確保しないといけないからです。
夜間に使っているのがばれると退院時まで没収されてしまいます。
治験のメリット4つ
治験に参加してみると、色々なメリットがあることが分かります。
主なものは以下の4つです。
- 結構な額の報酬がもらえる
- 無料で健康診断を受けられる
- 入院中の食費などが浮く
- 規則正しい生活ができる
一つずつ解説していきます。
① 結構な額の報酬がもらえる
一番のメリットは、何といっても報酬でしょう。
僕の参加した案件では、日給換算で2万円近くもらえるものもありました。
仮に6泊7日なら、10万円以上もらえます。
基本的には、被験者の負担が大きいほど(例えば採血の回数が多いなど)、日給換算の額は上がるみたいです。
僕は参加していませんが、中には20泊するような案件もあります。
その場合は40万円近くもらえるということです。
ちなみに、治験はあくまでも「ボランティア」という名目なので、「バイト代」といった表現は正しくありません。
正確には「負担軽減費」と言います。
しかし、お金をもらうことに変わりはないので、確定申告はちゃんとしておいた方が良いでしょう。
② 無料で健康診断を受けられる
無料で健康診断を受けられるのも、大きなメリットです(というか、健康診断だけで数千円の負担軽減費がもらえます)。
仮に治験を実施することにならなくても、細かい数値まで見てくれるので、受けておいて損はありません。
会社などの組織に属していない人は、なかなか自分では健康診断を受けないかもしれないので、かなりおすすめです。
③ 入院中の食費などが浮く
高額の負担軽減費がもらえるだけでなく、入院中は無料で食事をとれるのも大きなメリットです。
家を空けているので、光熱費などももちろんかかりません。
生活費の節約という意味でも、結構助かります。
④ 規則正しい生活ができる
入院中は当然、規則正しい生活を送ります。
僕が入院した病院では、だいたい夜11時に消灯、朝は7時頃に起床するパターンが多かったです。
また、食事の時間も決まっており、毎食栄養バランスのとれたご飯を食べられます。
入院中はお酒やタバコ、カフェインなども禁止です。
そのため、非常に規則正しく、健康的な生活を送れます。
ただ、運動ができないのは少しきついです。
治験のデメリット(つらい点)5つ
一方で、治験にはデメリット(もしくはつらい点)もあります。
具体的には以下の5つです。
- 採血がものすごく多い
- 入院の数日前から酒・タバコは禁止
- 食事の自由がない
- 外出できない
- 女性向けの治験は少ない
それぞれについて見ていきます。
① 採血がものすごく多い
先に書いた通り、投薬の当日はかなり採血が多くなります。
一回当たりの採血量はそれほど多くないですが、入院期間中に数十回も採血することもあるので、トータルだと献血の半分くらい血を抜かれているかもしれません。
そのため、入院の前後数か月は献血が禁止されています(もちろん、他の治験に参加するのも禁止です)。
② 入院の数日前から酒・タバコは禁止
入院中だけでなく、入院の数日前からお酒やタバコは禁止です。
普段から酒もタバコもやらない人にとってはどうってことないですが、習慣化している人は多少ストレスを感じるかもしれません。
僕の場合、タバコは吸わないですが、お酒は好きなので少しつらいです。
特に、入院の数日前に飲み会があると、アルコール抜きで参加することになるのでちょっと嫌です。
ただ、強制的にまとまった休肝日をつくれるという意味では、メリットかもしれません(笑)
ちなみに、コーヒーなどカフェイン類も入院当日から退院までは飲めません。
個人的には、お酒よりカフェインを全く摂れない方がきつかった気がします(カフェイン依存?)。
③ 食事の自由がない
栄養バランスのとれた食事をとれるのはメリットですが、裏を返せば食事の自由がないということです。
治験では、薬の影響を正確に測るため、参加者全員が、同じ食事を、同じ時間に、同じ量とらなくてはいけません。
おかわりは禁止ですし、苦手な食べ物があったとしても、残さず食べなければいけません。
そのため、食べ物のアレルギーがある場合は、そもそも参加できません。
僕は好き嫌いはあまりない方なので問題ありませんが、苦手なものが多い人はきついかもしれません。
厳密にカロリー計算されているので、普段大食いの人にとっては量が少なすぎてつらいと思います(笑)
さらに、投薬の当日は朝食抜きで、昼食が14時頃になる場合もあるので、空腹を我慢しなければならないのもつらい点です。
④ 外出できない
入院期間中は外出できないのも地味にきついです。
入院期間が長くなるほど、外の空気が吸いたくなります。
退院して数日ぶりに外に出ると、少し違和感があります。
湿気や草、コンクリートや排気ガスなどのにおいが一気に襲ってくる感じです。
たぶん病院特有のにおいに慣れたせいだと思います。
普段アウトドア派の人は、特にきついのではないでしょうか。
⑤ 女性向けの治験は少ない
全体的に見て、女性が参加できる治験の数は限られています。
これは厚生労働省が、第Ⅰ相治験(ヒトに初めて適用する治験)は「原則として少数の健康男性志願者」を対象とするようガイドラインで定めているからだと思われます。
ただ、患者を対象とする場合や、健康・美容食品モニターなどの場合は、女性が参加できる案件も多いようです。
「治験の初期段階のものは危ないかもしれないので、男が実験台になってね」ということだと思います(笑)
なお、先ほど紹介した「インクロム」には、女性も参加できる疫学モニターの案件もあるので、興味のある方は↓のサイトから登録してみてください(もちろん男性も参加できます)。
おわりに―治験に向いているのはどんな人?―
今回は治験の体験談をもとに、メリットやデメリットなどを中心に書いてきました。
「治験」と聞くと、「危険」とか「闇バイト」みたいなイメージもあるかもしれませんが(?)、そんなことはまったくありません。
薬が承認されるうえで必要な過程なので、れっきとした社会貢献です。
しかも、「負担軽減費」という名目でかなりの額の報酬ももらえるので、非常にありがたいです。
最後に、治験に向いているタイプ・職業などを挙げていきます。
- 就活を終え、単位も取り終えて暇な大学生
- 公務員試験や資格試験などで浪人中の人(入院中もがっつり勉強できます)
- 失業してしまって求職中の人(次の仕事が決まるまでの「つなぎ」として助かります)
- 在宅ワークが中心のフリーランス(パソコンなどを持ち込めば普通に仕事ができます)
- 売れないアーティスト(ミュージシャン・作家・役者など。夢に向かって頑張りましょう)
- ニート(社会とつながりを持てます。他人とあまり話さなくても良いので、社会復帰の第一歩としてぜひ)
僕が入院したときには、学生風の若い人が多かった印象です(僕自身も当時は一応学生で、長期休暇中に入院したためでもあると思いますが)。
自習室に行くと、公務員試験や司法試験の参考書を広げている人や、パソコンで仕事らしきことをしている人、さらにはマンガを描く練習をしている人(漫画家志望?)などがいました。
「時間はあるけどお金がない!」という人は、登録してみても良いのではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。