公務員試験

公務員試験の倍率、不景気になると上がる?データをもとに調べてみた

景気が悪くなると公務員人気が高まる」とよく言われます。

民間企業の経営が悪化して採用人数を抑えたり、将来不安から安定した公務員を志望する人が増えたりするためです。

結果として、公務員試験の倍率が上がると考えられます。

この説は本当に正しいのでしょうか。
また、正しいとしたら今後の公務員試験の倍率はどのように推移するのでしょうか。

この記事では、直近(2019年から2021年まで)の景気や公務員試験の倍率などのデータをもとに、「景気が悪化すると公務員試験の倍率上がる説」を検証してみます。

これから公務員試験を受けようか考えている方は参考にしてみてください。

2019年から2021年までの景気の推移

まずは直近の景気の推移を見てみましょう。

景気の良し悪しを判断する材料はいろいろありますが、ここでは代表的なものとして、GDP(国内総生産)と完全失業率を指標とします。

GDPの推移(2019年~2021年)

2019年から2021年までのGDPの推移は以下の通りです。

GDP(暦年・実質) 成長率(前年比)
2019 553.1兆円 -0.2%
2020 528.2兆円 -4.5%
2021 536.8兆円 1.6%

内閣府統計をもとに作成

新型コロナの感染拡大に伴う自粛要請などで、2020年のGDPは大きく縮小しました。

GDP成長率は-4.5%であり、これはリーマンショック期(2009年の-5.7%)に次ぐ減少率です。

2021年には持ち直したものの、コロナ前の2019年の水準(553.1兆円)までには回復していません。

完全失業率の推移(2019年~2021年)

失業率は雇用環境を表す指標の1つです。

15歳以上の労働力人口のうち、職がなく求職活動をしている人の割合であり、高いほど職を見つけられない人が多いことを意味します。

2019年から2021年までの完全失業率の推移は以下の通りです。

完全失業率(年平均)
2019 2.4%
2020 2.8%
2021 2.8%

総務省統計局HPを参照

2019年から2020年以かけて0.4%上昇しており、2021年は横ばいです。
やはりコロナの影響で雇用環境が悪化したことがうかがえます。

GDPと完全失業率の数値を見ると、2020年に大きく景気が落ち込み、2021年は多少回復したものの、コロナ前(2019年)に比べると決して良くはないと言えそうです。

2019年から2021年の公務員試験の倍率(関東・関西の自治体)

景気の推移を見たところで、次に公務員試験の倍率を見てみましょう。

全ての自治体などの倍率を調べるのは実質不可能なので、主に(人口や受験者数の多い)関東圏と関西圏の都道府県+県庁所在地の市区町村の倍率を調べてみました。

それが以下の表です(大卒区分の一般行政職)。

・関東(1都3県)

自治体201920202021
東京都5.6倍
(403/2,276)
4.6倍
(352/1,626)
13.7倍
(110/1,507)
神奈川県4.0倍
(187/757)
3.2倍
(217/705)
5.5倍
(159/873)
埼玉県5.2倍
(241/1,251)
3.8倍
(333/1,260)
4.2倍
(284/1,183)
千葉県6.5倍
(110/715)
3.6倍
(206/746)
5.4倍
(129/699)
東京特別区5.7倍
(2,032/11,501)
4.7倍
(1,741/8,121)
4.8倍
(1,881/9,019)
横浜市4.2倍
(391/1,635)
5.0倍
(381/1,918)
5.2倍
(386/2,000)
さいたま市5.8倍
(149/864)
3.2倍
(207/659)
5.2倍
(153/798)
千葉市4.8倍
(81/392)
5.3倍
(91/479)
7.2倍
(70/515)
(下段は最終合格者/1次試験受験者)

・関西(京阪神)

自治体201920202021
大阪府5.9倍
(174/1,018)
3.8倍
(181/693)
5.0倍
(181/899)
京都府3.5倍
(97/336)
3.3倍
(115/384)
2.1倍
(171/360)
兵庫県※
大阪市5.5倍
(150/822)
2.6倍
(282/734)
4.0倍
(302/1,195)
京都市6.7倍
(84/563)
5.4倍
(93/506)
4.3倍
(100/433)
神戸市4.5倍
(102/460)
4.8倍
(105/504)
5.2倍
(89/465)
※兵庫県はHPに実施結果掲載なし

結論:景気の良し悪しと公務員試験の倍率はあまり関係ない

表を見ると、どの年のどの自治体でも、倍率はだいたい3~6倍程度となっています。

注目すべきは、多くの自治体で、コロナ禍だった2020年や2021年の倍率が2019年と比べ大きく上がってはいない点です。
埼玉県や京都市などはむしろ低下傾向にあります。

東京都は例外的に、2021年に倍率が跳ね上がっていますが、これは採用者数を絞ったためです。

2020年はコロナの影響が出始めた頃だったため、いきなり公務員試験にシフトするのは難しいですが、準備期間を十分とれたはずの2021年でも倍率はそれほど上がっていません(2019年と比べて)。

以上の結果から、公務員試験の倍率は景気の良し悪しにあまり影響されないと言えるのではないでしょうか?

表を見てわかるのは、景気よりもその年の採用予定人数が重要だということです。
上記のどの自治体でも、採用者数(合格者数)が少ない年は倍率が高い傾向が見て取れます。

そのため、公務員試験を受ける際はその年の景気はあまり気にせず、受験しようとしている自治体の採用予定人数に注目した方が良いでしょう。

おわりに―コロナ禍でも公務員試験の倍率は上がらない―

今回は、景気が悪くなると公務員試験の倍率は高くなるのか?というテーマで書いてみました。

改めておさらいすると、新型コロナウイルスにより2020年に景気が大きく落ち込みましたが、公務員試験の倍率に大きな変化は見られませんでした。

それよりも重要なのは、その年の採用予定者数だと言えそうです。

2022年現在、国際情勢の深刻化や円安などで輸入物価が上がり、コストプッシュ型インフレが起きつつあります。

このままの状態だと景気が悪化すると考えられますが、近年の傾向を見る限り、公務員試験の競争率への影響は限定的だと言えるのではないでしょうか(予測を間違えたらすみません)。

公務員志望者の方は、景気の良し悪しなどに一喜一憂せず、試験勉強など目の前のやるべきことをしっかりとこなすことが大切です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ABOUT ME
ローニン
某県庁で5年働いた後、文系大学院に進学。その後、なんだかんだあって雑文家(令和の三文文士)になってしまったアラサー男です。 公務員関連の情報を中心に書いています。noteもやっています。