前回の記事では、地方部にいくほど、民間に比べ公務員(都道府県職員)の給与が相対的に高いことが分かりました。
ただし前回は、平均賃金額のトップ5とワースト5の計10都府県しか調べなかったので、今回は全都道府県について調べ、地方部と都市部の違いを見ていきたいと思います。
なお、前回と同様に、民間の平均賃金は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」、都道府県職員の月給は各都道府県が公表している「職員の給与等に関する報告」に基づいています。
地方部ほど公務員が優勢
調べてみたところ、やはり地方部ほど、民間に比べ公務員の給与が高い傾向がはっきりと見てとれました。
よって、確かに地方部では、公務員は「勝ち組」と言ってよいのかもしれません。
以下に一覧表とグラフを載せます。
※差額が10万円以上の都道府県は太字で表示
都道府県 | (A)平均賃金(円) | (B)都道府県職員の月給(円) | 差額(B-A)(円) |
北海道 | 272,800 | 373,042 | 100,242 |
青森県 | 240,500 | 348,465 | 107,965 |
岩手県 | 245,900 | 351,136 | 105,236 |
宮城県 | 281,900 | 364,673 | 82,773 |
秋田県 | 246,700 | 368,967 | 122,267 |
山形県 | 251,900 | 370,004 | 118,104 |
福島県 | 267,300 | 368,156 | 100,856 |
茨城県 | 301,000 | 382,089 | 81,089 |
栃木県 | 291,500 | 369,454 | 77,954 |
群馬県 | 286,200 | 374,439 | 88,239 |
埼玉県 | 301,500 | 384,805 | 83,305 |
千葉県 | 302,100 | 366,401 | 64,301 |
東京都 | 373,600 | 402,038 | 28,438 |
神奈川県 | 335,200 | 394,907 | 59,707 |
新潟県 | 259,400 | 374,229 | 114,829 |
富山県 | 287,900 | 365,777 | 77,877 |
石川県 | 285,200 | 362,285 | 77,085 |
福井県 | 274,200 | 359,340 | 85,140 |
山梨県 | 287,400 | 377,768 | 90,368 |
長野県 | 283,500 | 378,561 | 95,061 |
岐阜県 | 289,100 | 368,636 | 79,536 |
静岡県 | 290,400 | 380,783 | 90,383 |
愛知県 | 314,100 | 383,468 | 69,368 |
三重県 | 294,400 | 389,338 | 94,938 |
滋賀県 | 301,500 | 354,969 | 53,469 |
京都府 | 310,800 | 377,361 | 66,561 |
大阪府 | 320,500 | 379,240 | 58,740 |
兵庫県 | 301,500 | 394,262 | 92,762 |
奈良県 | 296,000 | 370,758 | 74,758 |
和歌山県 | 277,600 | 372,968 | 95,368 |
鳥取県 | 257,900 | 347,685 | 89,785 |
島根県 | 257,300 | 357,983 | 100,683 |
岡山県 | 277,400 | 374,189 | 96,789 |
広島県 | 294,500 | 385,587 | 91,087 |
山口県 | 279,700 | 364,169 | 84,469 |
徳島県 | 270,300 | 368,017 | 97,717 |
香川県 | 281,500 | 362,871 | 81,371 |
愛媛県 | 260,500 | 359,744 | 99,244 |
高知県 | 254,500 | 339,196 | 84,696 |
福岡県 | 282,900 | 369,095 | 86,195 |
佐賀県 | 255,000 | 353,490 | 98,490 |
長崎県 | 255,200 | 364,473 | 109,273 |
熊本県 | 262,400 | 360,856 | 98,456 |
大分県 | 262,100 | 357,597 | 95,497 |
宮崎県 | 248,500 | 352,469 | 103,969 |
鹿児島県 | 256,300 | 360,496 | 104,196 |
沖縄県 | 252,500 | 346,882 | 94,382 |
そもそも、公務員の給与ってどうやって決まるの?
あれ、公務員の給与って民間に合わせて決められてるんじゃなかったっけ?
ここまで読んで、こんな疑問を持った方もいるかもしれません。
確かに、公務員の給与は民間企業の平均に一致するように決められています。
地方自治体なら、その自治体にある企業が比較対象です。
しかし、比較対象の企業は従業員数が50人以上のものに限られています。
規模の大きい企業ほど給与も高い傾向があるので、50人未満の企業も含めた民間全体の平均(つまり、より実態に即した額)よりも、公務員の給与は高くなるのが普通です。
さらに、今回公務員の給与の比較対象にした平均賃金(A)には、正社員以外の従業員の賃金も含まれています。
そのこともあって、これほど差が大きいのだと考えられます。
大企業が少ない自治体ほど、公務員の給与は相対的に高くなる?
規模の小さい企業は、公務員の給与の比較対象から外されることを踏まえると、大企業が少ない自治体ほど、公務員の給与は相対的に高くなる、と言えそうです。
どうしてでしょうか?
単純化した例で考えてみます。
A県には従業員50人以上の企業が8社、50人未満の企業が2社あり、
B県には従業員50人以上の企業が2社、50人未満の企業が8社あるとします。
どちらの県でも、50人以上の企業の平均月給が40万円、1社あたりの従業員数が100人、50人未満の企業の平均月給が30万、1社あたりの従業員数が10人だとすると、公務員の月給はA,Bともに40万円になります。
しかし、50人未満の企業も含めた民間の一人当たりの月給は、A,Bで異なります。
計算すると、
A県は、40万×8社×100人+30万×2社×10人÷820人(すべての企業の従業員数)=約39.7万円
B県は、40万×2社×100人+30万×8社×10人÷280人(すべての企業の従業員数)=約37.1万円 となります。
そのため、A県では、民間全体と公務員の給与の差は3,000円であるのに対し、B県では29,000円も差が開いてしまいます。
以上の例から、大企業(の企業全体に占める割合)が少ない自治体ほど、公務員の給与は相対的に高くなることが分かります。
そう考えると、東北など民間と公務員の給与差が大きい地域は、大企業が少なく、50人未満の小規模な企業が多いのかもしれません。
実際には「ラスパイレス方式」という複雑な方法で比較しているため、これほど単純ではありません。
まとめ
今回は、民間と公務員(都道府県職員)の月給の違いについて、都市部と地方部の差を意識しつつ調べてみました。
まとめると以下のようになります。
- 公務員の給与は従業員数が50人以上の民間企業の給与との比較で決められる。
- 大企業の少ない自治体(地方部)ほど、民間全体の平均に比べ、公務員の給与は相対的に高くなる。
- 実際に全都道府県調べた結果からも、どうやらそう言える。
- よって、やはり地方では公務員は恵まれている(収入だけを見れば)。
最後まで読んでいただきありがとうございました。