公務員の仕事

公務員の異動が“ガチャ”と呼ばれる理由。実体験も踏まえて解説します

春は多くの業界で人事異動が活発になる季節です。

(地方)公務員の世界も例外ではなく、異動は一大イベントと言っても過言ではありません。

異動先の部署によって、最低でも今後数年間、下手をするとこの先数十年の公務員としての生き方が変わってくるからです。

この記事では、公務員にとって人事異動が「ガチャ」と言われるほど大きなイベントである理由を中心に書いていきます。

この記事を書いている僕は元県庁職員であるため、実体験に沿った内容となっています。
なるべくリアルな事情を書いていきますので、公務員の異動事情に興味のある方は参考にしてみてください。

公務員の人事異動が「ガチャ」と呼ばれる理由

公務員の異動が「ガチャ」と呼ばれるのは、運の要素が大きく絡むからという理由もありますが、以下のような理由も大きく関わっています。

  • 異動先によって仕事の内容が全く異なるから
  • 忙しさも全く異なるから
  • 出世できるかどうかを大きく反映するから

異動先によって仕事の内容が全く異なるから

(地方)公務員の事務職の場合、異動先によって仕事の内容が大きく変わります。

たとえば観光関係から福祉関係の部署に行ったり、税金関係の仕事から農林水産関連の部署に異動したり、といったことが普通にあります。

一度も経験したことのない部署に行くことも珍しくないため、異動の度に新たに仕事を覚えなくてはなりません。

興味があったり経験のある分野ならまだしも、そうでないことの方がむしろ多いくらいです。
そのため、異動の時期になると文字通り「ガチャ」を回すような気持ちになります。

『ハ〇ーポッター』でホグワーツの生徒が「組み分け帽子」(入る寮を決める帽子)を被るときのようなイメージです。

異動を告げられそうな人

スリザリン…じゃなかった、〇〇課は嫌だ、〇〇課は嫌だ!

忙しさも全く異なるから

仕事の内容に加え、忙しさも部署によって全く異なります。

毎日遅くまで残業し休日出勤も当たり前といった部署もあれば、「税金泥棒」と言われても仕方ないレベルでヒマなところ(もしくは時期)もあります。

明らかに人員のバランスが取れていないのですが、自分ではどうにもならないので本当に運任せです。

人間は忙しすぎるのもつらいですが、反対にヒマすぎるのもかなりこたえます。
自分が何のためにここにいるのかわからなくなるからです。

僕は5年間の県庁生活で両方の状態を経験したことがありますが、どちらも同じくらい嫌でした(笑)

もし(運悪く?)閑職に異動してしまったら、有休を使い倒して趣味や何らかの勉強などに時間を使ってもいいかもしれません。

ちなみに、忙しい部署に行くかどうかと、既婚か未婚か、子供がいるかなどはあまり関係ありません。

子どもを保育園に預けて時短勤務を選ぶ人も多いですが、たとえば小学生の子供がいるお母さんでも連日遅くまで残業しないと仕事が回らない、みたいなことは普通にあります。

結婚したばかりのタイミングで多忙な課に異動することになった同僚もいました。

特に福祉関連の部署は女性が多いのですが、福祉系は激務の傾向があるので、家庭を持つお母さん(お父さんもですが)たちの生活を犠牲にして成り立っている部分があります(役所の闇)。

ローニン

コロナ禍での保健所の激務ぶりを思い浮かべるとわかりやすいと思います。

そう考えると、(残業しても大して問題ない)若手の独身男性の職員を激務の部署にどんどん投入した方がいいような気がします(笑)

こうしたことから、家庭を持つ職員にとっては特に、どの部署に異動するかは非常に切実な問題になるのです。

出世できるかどうかを大きく反映するから

異動はその後の出世にも大きく影響します。

役所にはいわゆる「出世コース」の部署があるので、異動先によってその人が優秀な人材として扱われているのかだいたいわかります。

「誰がどこに異動する」という話で職員が盛り上がるのは、誰が出世しそうなのか皆少なからず気にしているからだと言えるでしょう。

出世を気にする職員にとっても、人事異動は非常に重要なイベントだということです。

役所の出世コースについては以下の記事で解説しているので、興味のある方はあわせて読んでみてください。

【地方公務員】出世コースの部署6選+α【元県庁職員が解説します】 地方公務員の出世コースはどこだろう? 地方公務員として働くうえで、出世できるかどうか気になる人も多いかと思います。 ...

なお、出世コースは激務の部署が多いため、あえてこのコースに乗りたがらない職員も中にはいます。
逆に、激務だろうと何だろうと、意気揚々と馳せ参じる出世欲の強い職員もいます。

いずれにしても、自分の希望する部署に行けるかどうかでモチベーションが大きく変わるので、「ガチャ」要素が強いのです。

部署内での異動もよくある

部署間の異動だけでなく、同じ部署の中で担当業務が変わることもよくあります。
僕のいた県庁では、本庁では「課内異動」、出先機関では「所内異動」と呼ばれていました。

課の中には「班」や「室」といったグループがあり、この所属が変わるということです(同じ班や室内で業務が変わることもあります)。

同じ課内でも、班や室が異なると業務内容も異なるため、部署間の異動ほどではないにしろ環境が大きく変わります。
班や室によって忙しさが全く違うことも珍しくないので、やはり「ガチャ」要素は強めです。

ちなみに部署内の異動(配置転換)は、人事や総務ではなく、部署内の管理職(課長や副課長もしくは課長補佐など)が決めます。

僕の経験上、若手の職員の方が部署内で異動する頻度が高いように思います。
というのも、若手のうちにいろいろな業務を経験させた方がいいと上の人が考えるからです。

確かにその通りだとは思うのですが、当事者からすると結構大変です。

僕は5年間の県庁生活のうち、部署間の異動は一度だけでしたが、課内(所内)異動は毎年食らっていました。

そのため、2年連続で同じ業務を経験したことがありません。
毎年4月に新たな業務を覚えないといけないので、正直言って結構な負担です。

「今年はこの業務がうまくいかなかったから、来年は反省を生かしてうまくやろう」と思っていても、そうした名誉挽回のチャンスはついに一度もやってきませんでした…。

ただ、若手でも部署内で配置転換がなく、3~4年全く同じ仕事をしていた同期や同僚もいたので、やはり運ゲーです。
要は、部署内の上の人が頻繁に配置転換させたいタイプかによって左右されるということです。

おわりに

今回は役所の人事異動事情について書いてみました。

「公務員の異動は転職と同じ」とよく言われますが、あながち間違っていないと思います。

仕事の内容だけでなく、忙しさや出世できるかどうかも大きく変わるので、公務員にとって人事異動は「人生をかけたガチャ」と言ってもいいかもしれません。

異動を告げられる際は上司に別室に呼び出されるため、さらにドキドキ感は増します。
別室から帰ってきた職員の表情で結果がわかるのも「異動あるある」でしょう。

そしてたいてい、異動しない側の職員の方が盛り上がっています(少なくともその年は他人事なので笑)

公務員の皆さん、今年も異動という名の恐怖の(?)ガチャを楽しんでください(←他人事)

ABOUT ME
ローニン
某県庁で5年働いた後、文系大学院に進学。その後、なんだかんだあって雑文家(令和の三文文士)になってしまったアラサー男です。 公務員関連の情報を中心に書いています。noteもやっています。