これまで、「大学によって公務員になる人の割合や人数がどのくらい違うのか」というテーマで、早慶やMARCH、関関同立など、有名私立大についてまとめてきました。
今回は、早慶上智やMARCHなどとだいたい同じくらいのレベルの関東の国公立大学である、筑波・横浜国立・千葉・都立大(旧首都大学東京)についてまとめました。
私立と国公立では、どのくらい割合や人数に違いがあるのかなどを中心に見ていきたいと思います。
大学別・公務員になる人の人数と割合
各大学の就職者数、公務員になった人の人数・割合をまとめたのが以下の表です。
卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
|
---|---|---|---|---|
筑波 | 2,253 | 1,037 | 121 | 11.7% |
横浜国立 | 1,690 | 976 | 53 | 5.4% |
千葉 | 2,409 | 1,348 | 254 | 18.8% |
都立大 | 1,619 | 1,013 | 124 | 12.2% |
※大学受験パスナビ参照(以下の表も同じ。数字は2019年度)
横国以外は10%台と、かなり高い割合です(私立大で10%以上は中央のみ)。
特に千葉大は18.8%と、飛びぬけて高いことがわかります。
ちなみにこの表では、公務員の中に教員はカウントされていません。
教員以外の公務員のみでこれだけの割合ということは、千葉大はもはや公務員養成学校みたいになっていると言ってもいいかもしれません(?)。
一方で、横国の5.4%という割合は、早稲田や関西、関西学院と同じくらいです。
横国と筑波は偏差値的には同じくらいですが、公務員になる人の割合にはかなり差があることがわかります。
参考までに、私立大(早慶上智MARCH、関関同立)の表も以下に載せておきます(明治は2020年度、それ以外は2019年度)。
卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
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---|---|---|---|---|
早稲田 | 9,462 | 6,585 | 346 | 5.3% |
慶応 | 6,307 | 4,656 | 140 | 3.0% |
上智 | 2,963 | 2,351 | 86 | 3.7% |
明治 | 7,153 | 5,477 | 362 | 6.6% |
青山学院 | 4,281 | 3,631 | 110 | 3.0% |
立教 | 4,511 | 3,735 | 226 | 6.1% |
中央 | 5,670 | 4,564 | 475 | 10.4% |
法政 | 7,661 | 6,445 | 416 | 6.5% |
大学 | 卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
---|---|---|---|---|
関西 | 6,523 | 5,620 | 313 | 5.6% |
関西学院 | 5,921 | 5,109 | 270 | 5.3% |
同志社 | 6,169 | 4,824 | 304 | 6.3% |
立命館 | 7,435 | 5,717 | 399 | 7.0% |
公務員になる人の多い学部は?
それぞれの大学について、公務員になる人の割合が高い学部から順に並べたのが以下の表です。
筑波大学の場合
学部※ | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
人間 | 67 | 15 | 22.4% |
生命環境 | 75 | 16 | 21.3% |
人文・文化 | 184 | 26 | 14.1% |
看護 | 66 | 9 | 13.6% |
情報 | 136 | 16 | 11.8% |
社会・国際 | 158 | 17 | 10.8% |
芸術 | 55 | 4 | 7.3% |
理工 | 110 | 7 | 6.4% |
体育 | 168 | 10 | 6.0% |
医療科学 | 18 | 1 | 5.6% |
医学 | 0 | 0 | ― |
※医学・看護・医療科学は「学類」(学科に相当、全て医学群)、それ以外は「学群」の合計
文系・理系を問わず、10%以上の学部(筑波の場合は「学群」)が結構あります。
なお、理系の場合は大学院に進学する人も多いので、卒業生全体のうちの公務員の割合はかなり低くなります。
横浜国立大学の場合
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
理工 | 162 | 10 | 6.2% |
経済 | 206 | 11 | 5.3% |
経営 | 281 | 15 | 5.3% |
教育人間科 | 327 | 17 | 5.2% |
学部によってそれほど大きな違いはありません。
理工学部が一番高いのが特徴です。
千葉大学の場合
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法政経 | 326 | 120 | 36.8% |
園芸 | 76 | 24 | 31.6% |
文 | 151 | 32 | 21.2% |
理 | 71 | 12 | 16.9% |
薬 | 39 | 6 | 15.4% |
国際教養 | 54 | 7 | 13.0% |
工 | 214 | 21 | 9.8% |
教育 | 343 | 32 | 9.3% |
看護 | 74 | 0 | 0.0% |
医 | 0 | 0 | ― |
全体的に割合が高いですが、中でも法政経学部と園芸学部は3割を超えています。
理系の園芸学部は、大学院進学者数も多い(66人)ので、卒業生全体に占める割合は低くなりますが、法政経学部から大学院に進学する人は19人だけです(「大学受験パスナビ」参照)。
卒業生全体の人数(377人)で割っても31.8%と、法政経学部から公務員になる人の割合は極めて高いと言えます。
都立大学の場合
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
都市教養 | 636 | 108 | 17.0% |
都市環境 | 93 | 11 | 11.8% |
システムデザイン | 122 | 3 | 2.5% |
健康福祉 | 162 | 2 | 1.2% |
都市教養学部・都市環境学部と、システムデザイン学部・健康福祉学部で割合に大きな差があります。
おそらく、前者の学部では、都市計画などを専攻する学生が、技術職で公務員になるパターンが多いのでしょう。
国公立と私立、2つの違い
公務員になる人の割合を調べる中で、国公立と私立にはっきりとした違いがあることが見えてきました。
具体的には以下の2点です。
- 全体的に国公立の方が公務員になる割合が高い
- 大学院に進学する人も国公立の方が多い
① 全体的に国公立の方が公務員になる割合が高い
国公立大と私立大を比べてみると、明らかに国公立の方が公務員になる人の割合が高いことがわかります。
国公立の場合、センター試験(共通試験)をはじめ、受験科目が多いため、同じく科目の多い公務員試験に対応しやすい、というのが一因だと思われます。
また、これは偏見も入っていますが、国公立の学生の方が、どちらかというとマジメで堅実なタイプが多く、公務員という職種と(性格や価値観の面で)相性が良いのかもしれません。
② 大学院に進学する人も多い
もう一つの特徴として、国公立の方が大学院に進学する人が多いことも挙げられます。
例えば筑波大学は、卒業生が2,253人であるのに対し、就職者数はその半数以下の1,037人です。
つまり、単純に考えて、卒業生の半分以上が大学院に進学しているということです(もちろん、進路が決まっていない人などもいると思いますが)。
単純に理系の学部・学生が多いという理由もありますが、私立に比べ研究設備が整っていたり、教員に対して学生の数が少なく、指導が行き届きやすい(+学費も安い)という要因もあると思われます。
そう考えると、学部を卒業してすぐに民間企業に就職する人の割合は、私立に比べるとかなり低いと言えます。
特に今回取り上げた中では、横国以外の大学にその傾向が強く見られます。
おわりに
今回は、関東の(そこそこ難関の)国公立大である、筑波・横国・千葉・都立大について、公務員になる人の割合などをまとめました。
公務員を目指すのであれば、この4大学の中なら千葉大学に入るのが一番いいかもしれません。
特に法政経学部の場合、卒業生の約3人に1人が公務員になっている計算なので、公務員試験の情報共有もしやすく、切磋琢磨して勉強できるのではないでしょうか。
また、国公立と私立で、卒業後の進路にはっきりとした違いが見られることも分かりました。
非常にざっくり言うと、国公立の方が(教員も含め)公務員になったり大学院に進学したりする人が明らかに多い傾向があります。
反対に私立の場合、新卒で民間企業に就職する人の割合が高くなります(中央のように、公務員になる人が多い私立大もありますが、それでも10%程度です)。
私立と国立の違いが明確に出た点で、個人的には興味深い結果となりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。