公務員には、「自己啓発等休業」という制度があります。
公務員の仕事を休業して、大学院や海外ボランティアなどに行ける制度のことです。
僕はこの制度を利用して大学院に進学しました。
今回は「自己啓発等休業」について、期間や手続きといった具体的な内容を解説していきます。
公務員として働いていて、この制度に興味のある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
自己啓発等休業は、地方自治体によっては認められていない(条例で定められていない)ところもあります。
また、制度や手続きの詳細(休業の申請書類など)については、自治体によって異なる可能性があるので、必ず総務課などに確認しましょう。
以下で紹介する内容は、人事院が定めている国家公務員用の制度と、僕が勤めていた県庁の制度に基づいています。
自己啓発等休業の概要
まずは「自己啓発等休業」の大まかな概要について紹介します。
具体的には以下の5点についてです。
- 休業してできること
- 対象となる職員
- 期間
- 休業中の給料・身分・学費など
- 復職後の扱い
休業してできること―進学や国際貢献活動―
自己啓発等休業によってできることは、大学・大学院への進学と、国際貢献活動の2つです。
大学や大学院への進学は、国内に限らず海外でもOKです。
国際貢献活動とは、JICAが行っている「青年海外協力隊」や「シニア海外ボランティア」などを指します。
休業中は職務に一切従事せず、思う存分学んだり海外ボランティアをしたりできます。
対象となる職員
対象となるのは、在職期間が2年以上の職員です(自治体によっては3年や4年以上のところも)。
ただし、非常勤や臨時職員などは含まれません。
あくまでも正規の職員に限られています。
ちなみに、僕のいた県では、本庁課長級以上の職員も認められていませんでした。
幹部的ポジションの職員が抜けてしまうと、組織全体に影響が出るためだと思われます。
期間
休業の期間は大学等への進学であれば2年、特に必要な場合は3年となっています。
大学の場合は4年制なので、3年時からの編入という形になるのかもしれません。
ただ、「大学等」とは言いつつ、基本的には大学院への進学がメインの制度だと言えるでしょう。
なお、国際貢献活動の期間は3年までとなっています。
ちなみに、大学や大学院に進学したい場合には、自己啓発等休業のほかに「修学部分休業」という制度も利用できます。この制度は、通常の勤務時間の半分を超えない範囲で休業し、その時間を修学にあてるというものです(もちろん、給料はその分減ります)。
休業中の給料・学費・身分など
休業中は、給料は一切出ません。
また、大学等に進学する場合、学費は全て自腹です。
それに加えて、社会保険料や住民税なども支払わなければいけません。
そのため、ものすごい額のお金が飛んでいきます。
自己啓発等休業を利用するのであれば、相当な額の貯蓄がないと厳しいでしょう。
休業中の金銭事情については以下の記事で解説しているので、興味のある方は読んでみてください。
ちなみに、休業中は職場(所属長)の許可をもらえば、アルバイトは可能です。
また、奨学金も他の学生と同じ条件で申請できます。
進学先の大学の奨学金制度などをよく確認しておくと良いでしょう。
なお、職務に従事しないものの、身分は公務員のままです(保険証も公務員時代のものをそのまま使えます)。
復職後の扱い(昇給・退職金など)
復職後には号給が調整され、ちゃんと昇給した形で給料がもらえます。
休業中の活動が公務員としての職務に特に有用である場合には、休業せず普通に勤務していたときと同じレベルで昇給します。
そのため、復職後に同期より給料が低くなることはありません。
ただし、「特に有用である」と認められなかった場合には、通常の半分程度しか昇給しません。
また、退職金の算定に関しては、「特に有用である」と認められれば、休業期間の半分が勤続年数として加算されます。
しかし、有用だと認められない場合には、退職金を算定する際の勤続年数に一切加算されません。
この「特に有用である」かどうかの判断にははっきりとした基準はなく、総務課や人事のさじ加減で決まってしまうのが実際のところです。
休業を申請する際、どんな内容の活動をするのか、それが公務員のどの業務にどのように役立つのかをなるべく具体的に書くのが大事です。
手続きについて―早めに申請した方がベター―
自己啓発等休業を申請する際には、遅くとも進学等をする1か月前には申請する必要があります(参考:人事院)
しかし、休業の手続きの煩雑さや業務の引継ぎなどを考えると、なるべく早めに申請した方が良いでしょう。
4月から休業するのであれば、12月までには申請するのが理想です。
というのも、この時期に来年度の人事異動に関する調整が進められるからです。
人事異動が決定する前の段階で伝えておけば、職場に迷惑をかけなくて済みます。
僕の場合は、11月の中旬に休業する旨を上司に伝え、11月末までには申請用の書類などを用意しました。
例年、この時期に異動希望調査があり、ちょうど良いタイミングだと思ったからです。
申請書類の様式は、総務課などが持っているはずです。
僕は県庁内部の総務課のHPから書類をダウンロードしました。
休業に関する情報も、総務課のHPをチェックして収集していました。
もし書式などが見当たらない場合は、直接総務課などに確認してみましょう。
なお、申請したら必ず通るというわけではなく、総務課がその職員の勤務成績や修学の内容などを審査して、問題がなければ承認されます。
ここで結構時間がかかるというのも、早めに申請した方が良い理由の一つです。
また、休業中も定期的に書面で活動報告をする必要があります。
僕の場合は、年に2度、前期と後期の成績が出たタイミングで、履修科目や学習内容などを書いた報告書(任意の様式)を成績表と一緒に提出していました。
入試の時期は大学院によって様々です。年に2回入試を行っている大学院もありますが、できれば1回目の入試を受け、合格しておきたいところです。というのも、2回目の入試は年明けに行われることがあり、合格発表後の手続きや休業の申請などであわただしくなるかもしれないからです。
最悪、休業の手続きが間に合わなくなる可能性がありますし、間に合ったとしても、すでに人事が決まっており、職場に迷惑をかけるおそれもあります。
試験勉強も、それに合わせて早くから始めておいた方が良いでしょう。
なお、僕の場合、第1回の入試が9月、第2回が2月だったので、1回目の入試を受験し、何とか合格しました(2回目の入試では手続きなどが間に合わなかったと思います)。
まとめ
今回は、公務員の自己啓発等休業について、制度の概要や手続きなどを中心に解説しました。
まとめると以下のようになります。
- 正規職員は、大学院の進学や国際貢献活動のため、2~3年休業できる。
- ただし、休業中は無給。学費や社会保険等も払うので金銭的にはかなりキツイ。
- 休業の申請はなるべく早めに。
- 活動内容が「職務にとって特に有用」であることを示さないと、復職後、昇給幅が小さくなる。
経済的な犠牲は大きいですが、職を失わずに学び直したり海外ボランティアをしたりできるというのは大きなメリットだと思います。
どうしても大学院で学びたい!国際的な活動をしたい!という方は、(家計とも相談しつつ)思い切ってチャレンジしてみてはどうでしょうか。