ネット上には(僕も含め)「元公務員」を名乗り、公務員ネタをあれやこれやと書いている人が結構います。
おそらく、公務員を自己都合で退職する人は少ない一方、公務員の仕事に興味のある人は多いため、それなりの需要を見込めるからでしょう。
しかし、公務員を退職した人が公務員ネタを書く際には、注意しなければならない点もあります。
今回は、(自戒も込めて)元公務員がブログ・ツイッターで公務員ネタを書いたり、あるいはYoutubeで発信したりする際の注意点を書いていきます。
公務員ネタを発信したい(もしくはすでにしている)元公務員の方は参考にしてみてください。
元公務員が公務員ネタを書くときに気をつけるべきこと
元公務員が公務員ネタを書く際に気をつけるべきことは、次の3点です。
- 守秘義務は必ず守る
- 元職場の悪口や「公務員バッシング」ネタは書かない
- なるべく客観的なデータを用いる
①守秘義務は必ず守る
当たり前ですが、守秘義務は必ず守らなければなりません。
現役の公務員はもちろんですが、退職した人も同じです。
公務員は、仕事上いろいろな機密事項を取り扱います。
特によくあるのが個人情報です。
氏名や住所はもちろん、たとえば税金の仕事をしていると(滞納者の)口座情報や残高なども把握できてしまいます。
こうした職務で知った機密事項をネットに公開するのは完全にアウトです(ネットだけでなく、リアルの場で他人にばらすのも厳禁です)。
僕は本庁の課にいたとき、とある政治的な団体の活動状況を知りうる立場にいたのですが、外部はもちろん、県庁内部でも取り扱いには細心の注意を払っていました。
それ以外にも課の共有フォルダには「取扱注意」の情報がたくさんあり、さらには「厳秘」と書かれた激ヤバ情報もありました。
また、元公務員よりも現役の公務員に当てはまる内容ですが、プレスリリースなどで公表する前の情報をオープンにするのも厳禁です。
このように公務員は、どの部署にいてもなにかしら機密情報を取り扱うので、(退職後でも)ネットで発信するときはかなり慎重になる必要があります。
僕は当ブログでいろいろと公務員ネタを書いていますが、リスクを最小限に抑えるため、実名と顔はさらしておらず、どの役所に勤めていたのかも明かしていません(「某県庁」とだけ書いています)。
ただ、元公務員の発信者でも、本名や顔、勤務していた役所をオープンにしている方も結構いるので、書く内容さえ気をつければ問題ないとは思いますが。
②元職場の悪口や「公務員バッシング」ネタは書かない
①と違い、意見が分かれるかもしれませんが、単なる元職場の悪口や公務員バッシングネタも書くべきではないと思います。
なぜなら、現役公務員が読んだときに気分を害する可能性があるからです。
公務員を辞めるということは、元職場である役所という組織に少なからず不満を抱いていたケースが多いと思われます。
そのため、つい悪口を書きたくなる気持ちもわからなくはありません。
実際、僕も不満が全くなかったと言えばウソになりますし、役所という組織に問題があるのも事実です。
しかし、問題だらけの役所という組織の中で、葛藤を抱えながら頑張っている公務員もたくさんいるのです。
そういった人たちの顔が思い出されるので、僕はなるべく元職場や公務員全般の悪口は書かないようにしています。
とはいえ、「公務員バッシング」ネタは需要が大きいため、アクセス稼ぎには最適なのが困ったところです(笑)
ただ、ひねくれものの(?)僕はだからこそ、あえて公務員を擁護するような内容も書いてやろうと思っています。
たとえば、「公務員の給料は減らしてはいけない」というテーマで、なるべく論理的に、かつわかりやすさを意識して書いた記事がこちらです。ご関心の方は読んでみてください。
だいたい、役所に限らずどの組織にも何かしらの問題はあるはずです。
また組織である以上、優秀で人間的に尊敬できる人もいれば、どうしようもないダメ人間もいます。
気の合う人もいれば、合わない人だっているでしょう。
役所に限らない組織一般の問題や、個人的な人間関係のいざこざを「役所の問題」として論じてしまうと、世の中に渦巻く公務員批判を助長することになってしまわないでしょうか?
いずれにしても、「元公務員」という安全な立場から、一方的に悪口を書くのはちょっと違うのではないかと思ってしまうのです。
ただし、なるべく私情を挟まず客観的に役所内部の問題点などを指摘するのはありだと思います。
その際も単なる愚痴や悪口ではなく、なぜそうした問題が生まれるのか、またどうすればいいのかといった点まで掘り下げて書ければベストです。
自分の経験をベースにするのは構いませんが、あくまでも問題を考察するきっかけ(導入)にとどめた方がいいでしょう。
それができれば、建設的な議論につながるかもしれません。
つい気合が入って(?)長々と書いてしまいましたが、要は「現場の(頑張っている)人間の気分を害する生産性のない悪口は書くな」ということです。
「辞めた自分が正しくて役所が悪い」と決めつけるのではなく、「たまたま自分の性格や気質が役所には合わなかった」くらいに考えるのがちょうどいいと思います。
③なるべく客観的なデータを用いる
②にも通じるかもしれませんが、自分の主観だけで書くとどうしても説得力に欠けます。
また内容的に間違ってしまう可能性もなきにしもあらずです。
そのため、客観的なデータを使えるのであればなるべく使うべきです。
たとえば公務員の給与や組織に関するデータ(人員など)は総務省のHPに載っていますし、民間の調査会社が公表しているデータなども役に立ちます。
もちろん客観的なデータを使えないネタもたくさんあるので(実際に僕もいろいろと書いています)、その場合は「自分の主観や経験をベースに書いています」とことわっておいた方がいいでしょう。
ただ、長く勤めていると他の役所の人と交流する機会も多くなるため、自分が勤めているところ以外の役所事情もそれなりにわかるようになります。
その辺りも考慮した上で、ある程度の普遍性を意識して書けば大丈夫かと思います。
それに、データや根拠に基づいて文章を書くのは、元公務員にとって難しくありません。
公務員が作成する文書には間違った内容を載せてはいけないので、ちゃんとした根拠を示した文章を書くスキルが身についているはずだからです。
その経験を存分に生かしましょう。
おわりに―元公務員が公務員批判をするなら慎重に―
今回は元公務員が公務員ネタを発信するときに気をつけるべきことを書いてみました。
最も重要な論点は、「公務員を辞めた人間が公務員や役所批判をしていいのか?」あるいは「批判するとしたらどのような点に気をつけるべきか?」という点でしょう。
僕はなるべく批判すべきではないという立場ですが、「役所の内部を知っているからこそどんどん批判すべきだ」と考える人もいると思います。
お人好し(?)の僕は、役所の中でいろいろと頑張っている人を見てきたので、どうしても批判するのに及び腰になってしまいます。
このスタンスが正しいのかどうか正直わかりません。
ただ、役所の内と外から、少しでも公務員の抱える問題を改善する動きが生まれればいいな、と漠然と考えています。
元公務員としてできることがあればやっていきたいです(まあ、こんなブログを書いたところで何の役にも立たない気がしますが…)。