これまで、公務員になる人が多い大学はどこかというテーマで、様々な大学の進路状況を見てきました。
その結果、全体として私立よりも国公立の方が、公務員になる人の割合がかなり高いことが判明しました。
ただ、これまで調べた国公立大は横国・筑波・千葉・都立大の4つだけなので、サンプル数は十分ではありません。
そこで、今回は旧帝大(東大・京大・北海道大・東北大・名古屋大・大阪大・九州大)を取り上げます。
他の国公立や私立大に比べ、公務員になる割合にどのくらい違いがあるのか調べていきます。
大学別・公務員になる人の人数と割合
全国でもトップレベルの頭脳を持つ旧帝大の学生たちは、どのくらいの割合で公務員になるのでしょうか。
各大学の就職者数、公務員になった人の人数・割合をまとめたのが以下の表です。
大学 | 卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
---|---|---|---|---|
東京 | 3,140 | 1,017 | 191 | 18.8% |
京都 | 2,832 | 914 | 61 | 6.7% |
北海道 | 2,493 | 881 | 147 | 16.7% |
東北 | 2,457 | 852 | 182 | 21.4% |
名古屋 | 2,235 | 871 | 130 | 14.9% |
大阪 | 3,388 | 1,423 | 140 | 9.8% |
九州 | 2,615 | 916 | 142 | 15.5% |
東大以外は大学受験パスナビ:旺文社 (evidus.com)参照(2019年度卒業生)。東大は学部卒業者の卒業後の状況 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)参照(2016年度卒業生)。
大学によって、公務員になる人の割合にかなりの差があります。
最も高いのは東北大(21.4%)で、最も低いのは京大(6.7%)です。
東大が18.8%であるのと比べると、京大の低さが際立っています。
京大生は変人が多いので(←偏見)、公務員のようなお堅い仕事には就きたがらないということでしょうか?
それはともかく、公務員になる人の割合が10%以上の場合、私立に比べるとかなり高い水準だと言えます(私立の有名大学で最も高いのは、中央大学の約10%)。
比較対象として、私立の早慶上智とMARCH、国公立の横国・筑波・千葉・都立大の表を載せておきます。
大学 | 卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
---|---|---|---|---|
早稲田 | 9,462 | 6,585 | 346 | 5.3% |
慶応 | 6,307 | 4,656 | 140 | 3.0% |
上智 | 2,963 | 2,351 | 86 | 3.7% |
明治 | 7,153 | 5,477 | 362 | 6.6% |
青山学院 | 4,281 | 3,631 | 110 | 3.0% |
立教 | 4,511 | 3,735 | 226 | 6.1% |
中央 | 5,670 | 4,564 | 475 | 10.4% |
法政 | 7,661 | 6,445 | 416 | 6.5% |
大学 | 卒業生数 | 就職者 | うち公務員 | 割合 (公務員数÷就職者数) |
---|---|---|---|---|
筑波 | 2,253 | 1,037 | 121 | 11.7% |
横浜国立 | 1,690 | 976 | 53 | 5.4% |
千葉 | 2,409 | 1,348 | 254 | 18.8% |
都立大 | 1,619 | 1,013 | 124 | 12.2% |
※大学受験パスナビ及び各大学HP参照(2019年度卒業生。明治は2020年度)
公務員になる人の多い学部は?
各大学について、公務員になる人の割合が高い学部から順に並べたのが以下の表です。
東大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 220 | 91 | 41.4% |
農・獣医学 | 22 | 9 | 40.9% |
教養 | 89 | 23 | 25.8% |
農 | 57 | 13 | 22.8% |
教育 | 60 | 9 | 15.0% |
文 | 212 | 20 | 9.4% |
経済 | 209 | 18 | 8.6% |
医(健康総合科学科) | 14 | 1 | 7.1% |
工 | 113 | 7 | 6.2% |
医(医学科) | 2 | 0 | 0.0% |
理 | 14 | 0 | 0.0% |
薬 | 5 | 0 | 0.0% |
京大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 178 | 26 | 14.6% |
農 | 54 | 7 | 13.0% |
教育 | 43 | 5 | 11.6% |
医(人間健康科学科) | 70 | 4 | 5.7% |
文 | 124 | 7 | 5.6% |
総合人間 | 70 | 3 | 4.3% |
薬 | 30 | 1 | 3.3% |
理 | 31 | 1 | 3.2% |
経済 | 232 | 6 | 2.6% |
工 | 82 | 1 | 1.2% |
医(医学科) | 0 | 0 | ― |
北海道大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 160 | 58 | 36.3% |
文 | 131 | 28 | 21.4% |
農 | 50 | 10 | 20.0% |
工 | 104 | 20 | 19.2% |
獣医 | 36 | 5 | 13.9% |
理 | 29 | 3 | 10.3% |
薬 | 31 | 3 | 9.7% |
水産 | 44 | 4 | 9.1% |
経済 | 169 | 13 | 7.7% |
教育 | 35 | 1 | 2.9% |
医(保健学科) | 92 | 2 | 2.2% |
医(医学科) | 0 | 0 | ー |
歯 | 0 | 0 | ー |
東北大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 126 | 53 | 42.1% |
教育 | 53 | 19 | 35.8% |
文 | 167 | 48 | 28.7% |
薬 | 21 | 4 | 19.0% |
経済 | 254 | 41 | 16.1% |
農 | 26 | 4 | 15.4% |
理 | 35 | 4 | 11.4% |
工 | 82 | 8 | 9.8% |
医(保健学科) | 88 | 1 | 1.1% |
医(医学科) | 0 | 0 | ― |
歯 | 0 | 0 | ― |
名古屋大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
文 | 116 | 38 | 32.8% |
法 | 126 | 36 | 28.6% |
教育 | 57 | 14 | 24.6% |
農 | 36 | 8 | 22.2% |
理 | 47 | 5 | 10.6% |
経済 | 202 | 16 | 7.9% |
情報 | 57 | 3 | 5.3% |
医(保健学科) | 149 | 7 | 4.7% |
工 | 81 | 3 | 3.7% |
医(医学科) | 0 | 0 | ー |
大阪大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 171 | 36 | 21.1% |
文 | 124 | 16 | 12.9% |
人間科 | 113 | 14 | 12.4% |
外国語 | 498 | 51 | 10.2% |
工 | 91 | 8 | 8.8% |
薬 | 27 | 2 | 7.4% |
経済 | 174 | 10 | 5.7% |
基礎工 | 94 | 3 | 3.2% |
理 | 41 | 0 | 0.0% |
医(保健学科) | 90 | 0 | 0.0% |
医(医学科) | 0 | 0 | ー |
歯 | 0 | 0 | ー |
九州大
学部 | 就職者数 | うち公務員 | 割合 |
---|---|---|---|
法 | 129 | 56 | 43.4% |
教育 | 31 | 10 | 32.3% |
農 | 66 | 13 | 19.7% |
文 | 118 | 19 | 16.1% |
工 | 126 | 18 | 14.3% |
経済 | 181 | 19 | 10.5% |
薬 | 25 | 2 | 8.0% |
理 | 51 | 4 | 7.8% |
芸術工 | 83 | 1 | 1.2% |
医(生命科学科) | 1 | 0 | 0.0% |
医(保健) | 87 | 0 | 0.0% |
21世紀プログラム | 18 | 0 | 0.0% |
医(医学科) | 0 | 0 | ― |
歯 | 0 | 0 | ― |
やはり法学部が優勢
学部ごとの割合を見ると、ほとんどの大学で法学部が最も高いことが分かります。
東大や東北大、九州大の法学部に至っては、就職者のうち、なんと4割以上が公務員です。
以前の記事では、千葉大の法政経学部で3割以上の学生が公務員になっていることを示しましたが、それをさらに上回っています。
公務員試験では法律の問題の配点が高いことに加え、出題範囲が広範です。
そのため、センター試験(共通試験)で多くの科目を受験し、かつ大学で法律を学ぶ国立大の法学部が有利になるので、公務員志望の人が多くなるのでしょう。
国家公務員と地方公務員の人数比
旧帝大のような難関の国立大では、国家総合職(いわゆるキャリア官僚)の採用試験に合格する人も珍しくありません。
一方で、地方公務員になる人も普通にいます。
では、国家公務員と地方公務員になる人数やその比率は、それぞれどのくらいなのでしょうか。
国家公務員と地方公務員それぞれに採用された人数を、(公務員になる人の多い)法学部に絞って調べてみました。
その結果が以下のグラフです。
東大は圧倒的に国家公務員になる人が多いことが分かります。
その多くが、国家総合職(キャリア官僚)でしょう。
東大以外では、国家と地方の人数にそれほど大きな差はありません。
なお、この表の「国家」には国家一般職なども含まれています。
そのため、国家総合職として採用される人は、グラフ上の数字よりも少なくなります。
おわりに
今回は、公務員になる人の割合について、国立大の中でも最難関である旧帝大に絞ってまとめました。
旧帝大と一口に言っても、公務員になる人の割合にはかなりのばらつきがあることが分かりました。
特に、東大と京大に大きな違いがあるのが興味深かったです。
また、東大以外の大学では、国家公務員と地方公務員の人数に、そこまで大きな差がないこともうかがえます。
逆に言えば、官僚になるなら東大がダントツで適しているということかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。