人前で話す際に緊張したり、予期せぬ事態で焦ったりするとき、多少の冷や汗をかく経験は誰にでもあると思います。
しかし、中には尋常ではないレベルで汗をかいてしまう人もいます。
汗をかいていることで、周りの人が不快に思っていないか気にしすぎてしまい、余計緊張して大量に汗をかく…。
こうした悪循環に陥り、汗をかくことを過度に恐れる状態を「発汗恐怖」と言います。
僕は10代の頃からこの発汗恐怖に苦しめられてきました。
最近になりようやく症状がおさまりつつありますが、特に中学生から20代前半にかけてはかなりひどい状態でした。
今回は発汗恐怖が頻発していた頃の体験談や対処法(どうやって改善していったか)などについて書いていきます。
中学生の頃に発症
もともと、小さいころから人一倍汗っかきな体質で、夏は朝起きると布団が汗でびしょびしょになるほどでした。
小学生の頃は汗っかきなことを気にしなかったのですが、中学生になるとだんだんと他人の目を気になります(思春期にはよくあることですが)。
それに伴って、汗をかいている状態が変に思われていないか、やたらと気にするようになっていきました。
今でも覚えているのが夏休み明けの全校集会のときです。
9月初めのまだ暑い時期に、全校の生徒が体育館に集まるこのシチュエーション。
体育館に空調はなく、蒸し暑い中校長先生などの長話を聞いている間に、徐々に汗をかき始めました。
近くにたくさん生徒がいるので、汗をかいているのを変に思われているんじゃないか気になりだします。
そうなると神経が異様にたかぶり、さらに大量に汗をかくようになります。
ここまでくるともう止まりません。
自分が汗をかいていることばかりに意識が向いてしまい、汗が引かないどころか加速度的に発汗量が増えていきます。
大げさでなく、一人だけサウナに入っているような状態です。
結局集会が終わる頃には汗で制服はびしょぬれ、足元には直径30センチほどの水たまりができていました(笑)
その後もことあるごとに発汗恐怖に襲われ、ハンカチが常に手放せないようになってしまいます。
この症状の嫌なところは、一度発症するとトラウマになり、同じようなシチュエーションになると緊張して余計汗をかきやすくなる点です。
ただ、同じような状況でもまったく大丈夫なときもあり、中学生の頃は毎日ロシアンルーレットを回しているような感覚でした。
高校や大学でもなかなか改善せず、人が多い場所では汗をかいてしまわないかいつも不安でした。
発汗恐怖に限らず、赤面恐怖や会食恐怖、スピーチ恐怖などは、本人に苦痛があることに加え、日常生活に支障をきたすレベルになると治療が必要なようです。具体的にはこれらの症状が原因で不登校になったり、人と会うのを避けたりするような状態です。
僕の場合は、同級生などが適度にいじって笑いに変えてくれたおかげか(?)、不登校にはならず、病院に通うこともありませんでした。しかし、仮にいじめなどに遭っていたらどうなっていたか分かりません。
発症しやすい場所・状況
発汗恐怖が起きるシチュエーションは限定されています。
僕の場合は、特に
- 大人数の教室
- 電車
- 電話中(特に職場)
これらの場所・場面で頻繁に発症していました。
大人数または人が密集した教室
学生時代に苦手だったのは大人数、または人が密集した教室です。
自分の後ろに人がいる状態で一度汗をかくと、視線を気にして汗が止まらなくなってしまう、ということが頻繁にありました。
中学や高校時代は座席を選べませんでしたが、大学時代はなるべく後ろの方か一番横の席に座るようにしていました(そうすると後ろの視線を感じにくくなるので)。
逆に、少人数のゼミ形式の授業などは(自分が話すときでも)平気でした。
おそらく、全員が向かい合う座り方なので、後ろから視線を感じることがないからだと思います。
電車
電車内でも、しばしば発汗恐怖に襲われていました。
特に満員電車はつらかったです。
また、夏よりも冬の方が嫌でした。
というのも、夏は冷房がついているので涼しい一方、冬は暖房が効きすぎて汗をかきやすくなるからです。
冬の電車内で大汗をかいて、電車から降りて汗が冷えて死ぬほど寒くなった経験も何度もあります。
電車に乗ったらすぐにマフラーを外すなどの対策をとっていました。
電話中(職場など)
社会人になってからは、電話中に異常に汗をかくことがよくありました。
予期せぬことを聞かれたり、うまく話せなかったりするとテンパってしまい、全身から汗が噴き出す感覚に襲われていました。
電話を終える頃には、受話器が汗でびしょ濡れになることも珍しくありませんでした。
なお、電話が苦手なエピソードとその対処法などについては、以下の記事でHSPと絡めて書いています。
対処法
発汗恐怖の症状がひどい場合、精神科などでカウンセリングを受ける選択肢もありますが、自分で改善する方法もあります。
ここでは僕の実践した(あるいは今もしている)対処法を紹介します。
具体的には以下の4つです。
- 物理的に発汗を抑える(制汗剤など)
- 意識を分散・または集中させる
- 年齢を重ねる(思春期を脱する)
- 自分に正直になる
それぞれについて見ていきます。
物理的に発汗を抑える(制汗剤など)
一つ目は物理的に発汗を抑える方法です。
最も手軽なのは制汗スプレーなどを使うことでしょう。
ただ、僕の場合は制汗スプレー程度では収まらないレベルだったので、塩化アルミニウムを含有した制汗剤に頼っています。
塩化アルミニウムの制汗剤にもいろんな種類がありますが、僕が使っているのは「オドレミン」というものです。
現在も家に常備しており、緊張する場面があるときなどに使用しています。
完全に発汗を抑えることはできませんが、かなり効果はあります。
発汗恐怖は精神的な要因が大きいので、これを塗ることで精神的に楽になる効果もあるのだと思います(「プラシーボ効果」というやつです)。
意識を分散・または集中させる
汗をかくことから意識を分散させるか、またはそれ以外のことに集中することも効果的です。
例えば僕は電車に乗るとき、たいてい音楽を聴きながら本を読むようにしています。
音楽や本の内容に集中することで視覚と聴覚を外界から遠ざけられ、他人の存在が気にならなくなるからです。
他人の目が気にならなくなるので、さほど汗をかかなくなります。
長年の試行錯誤によって(?)編み出した方法です。
年齢を重ねる(思春期を脱する)
意識してできる方法ではありませんが、もしかすると、年齢を重ねるというのが一番良い対処法かもしれません(笑)
往々にして、思春期の頃は自意識過剰で他人の目を気にするものです。
しかし、年をとるにつれて自分の存在がちっぽけなことに気づき、過剰な自意識が少しずつ薄れていきます。
このことに気づくと、自然と発汗恐怖もおさまり始めます。
というのも、発汗恐怖の大きな原因は他人の目を気にしすぎることにあるからです。
僕も30歳が近づいた頃から、ようやく自意識過剰が弱まってきて、昔に比べると症状が改善してきました。
やっと思春期を脱したということでしょうか(笑)
自分に正直になる
他人の目を気にしすぎるのは、自分に自信がないことの裏返しだと言えます。
人からどう見られているかばかりを気にして、自分のやりたいことを我慢していると、ますます自信がなくなっていきます。
そのような状態だと発汗恐怖の症状は改善しません。
自分の生き方に疑問を持っているのなら、「どんな生き方をしたいのか」「何をやりたいのか」といった自分の本音を探ると良いかもしれません。
胸を張った生き方ができると、自然と周りの目が気にならなくなり、不安や恐怖を感じにくくなるはずです。
良い意味で自分の欲求に正直になることが大切なのではないでしょうか。
HSPとも関連する?
昨今話題になっているHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と発汗恐怖の症状は関連するのでしょうか?
HSP気質もある僕自身の経験から言うと、多少は関係すると思います。
というもの、ちょっとしたことで神経がたかぶり、緊張したり焦ってしまったりする傾向がHSPにはあるからです。
そうすると必然的に、精神的な面で汗をかきやすくなります。
発汗は交感神経が副交感神経に対して優位になることで起きますが、HSPの人はこうした自律神経が乱れやすいようです。
つまり、外界の刺激に対し過剰に反応することで、交感神経が強く働いて発汗しやすいということです。
また、暑さのような環境の変化に敏感なために、汗をかきやすい傾向もあるかもしれません(もちろん、HSPに関係なく汗っかきな人はたくさんいますが)。
さらに、他人の感情や様子などを必要以上にうかがってしまうのもHSPの特徴です。
そのため、汗をかいている自分が他人に見られているような感覚に陥りやすいのかもしれません。
おわりに―自信を持って年をとろう―
今回は発汗恐怖という症状について、自分自身の経験をもとに対処法などを書いてきました。
発汗恐怖を発症しやすいのは自意識過剰なタイプに加え、目立つのが苦手で周りに気を使い過ぎてしまうタイプの人だと考えられます。
生まれつきの気質が関係するので、自分で完全に克服するのは難しいかもしれませんが、ここで紹介した対処法が参考になればうれしいです。
なお、発汗恐怖を改善するには「年をとって思春期を脱するのが一番効果的」という、身もふたもないことを書いてしまいましたが(笑)、補足すると「自分に自信を持って年をとる」のが大事だということです。
自分の生き方に自信を持てるようになれば、ちょっとくらいの緊張で取り乱すこともなくなるでしょうし、人の目を過剰に気にすることもなくなるはずです。
そうなれば、いつの間にか汗をかく程度のことに恐怖など感じなくなるのではないでしょうか。
と、こんな偉そうなことを書いている僕自身が、胸を張った生き方ができているのか分かりませんが…。
それはさておき、最後まで読んでいただきありがとうございました。