はじめに
公務員の仕事と(フリーランスの)ライターの仕事は、一見すると全然関係ないように思われます。
一方は超おカタい安定感抜群の仕事、もう一方は自由かつ不安定な仕事というイメージが一般的でしょう。
しかし、実は両者には共通点がいくつかあります。
というより、「公務員の経験がライター業に生かせる」と感じる場面が結構あることに気づきました。
そこで今回は、公務員の経験がライティングに生かせる理由について解説していきます。
ちなみにこの記事を書いている僕は、5年間某県庁で公務員として働いた後、安定をかなぐり捨て(?)ライターに転身した経歴を持っています(ライター以外の仕事も少しやっていますが)。
フリーランスの状態になって、現在(2021年10月時点)およそ半年がたったところです。
※なお、正確には公務員を2年間休業して大学院に進学した経験もありますが、この話は今回は割愛します。詳細は以下の記事で書いていますので、ご関心があればこちらも読んでみてください。
自分自身の経験にもとづいて書いているので、それなりに説得力のある内容になっていると思います。
公務員からライターを目指す人がどれだけいるか分かりませんが、興味があれば読んでもらえると嬉しいです。
公務員の経験がライティングに生かせる4つの理由
公務員の経験がライティングに生かせる理由として、主に以下の4つが挙げられます。
- 公務員は「書く」仕事が多い=文章力が身につくから
- ライターの文章に「個性」はいらないから
- 最低限の社会的マナーは備わっている(人が多い)から
- 「元公務員」という経歴を見て、ある程度信用してくれるから
それぞれ解説していきます。
①公務員は「書く」仕事が多い=文章力が身につくから
公務員の仕事をこなしていると、だんだんと文章力が身についていきます。
というのも、役所の仕事は基本的に「文書」に基づいておこなわれるので、あらゆる場面で文章を書かなければならないからです。
公務員の「書く」系の仕事は、ざっと思いつくものだけでもこれだけあります。
- 議会答弁や関連する資料
- 予算要求の資料
- レク資料
- 会議の議事録
- 起案するときの案文
- プレスリリースの資料(HPに載せる文章も)
- 国への要望資料(知事会などの要望も原案は役人が作っています)
- 知事などのあいさつ文
- 市民からのお問い合わせへの回答(広聴関係)
- 普段のメールでのやりとり
もちろん最初はうまく書けませんが、たいてい上司に細かく(本当に細かい!)添削されるので、元々文章力のない人でも、数年たてばそれなりに「役所っぽい」文章を書けるようになります。
ちなみに、ここで言う「文章力」とは、小説家のような独創的な文才があるという意味ではなく、
- 論理性がある
- 「てにをは」を間違えないなど、適切な日本語を使える
- データなどの根拠に基づいた、正しい内容を書ける(役所の公表する文章には間違った情報を絶対に載せてはいけないため)
といったことを意味します。
ライティングの仕事をする上で、こうした能力は必須です。
しかし、いわゆる「フリーランス」のライターは名乗ろうと思えば誰でも名乗れてしまうため、これらの基本的な文章力が身についていない人も中にはいます。
ということは、最低限きちんとした文章を書けるだけで、ある程度のアドバンテージがあると言えるのです。
余談ですが、よく国会答弁などで「官僚の作った作文は何を言っているのか分からない」といった批判を目にすることがあると思います(実際に分かりにくいですが…)。
しかし、あれはあえて分かりにくくあいまいな文章を書いているだけで、役人は分かりやすい文章を書こうと思えば普通に書けます。
地方公務員も基本は同じです。
議会の答弁などをたくさん書いていくうちに、質問にはっきり答えない「ごまかし」のテクニックも身につけることができます(笑)
②ライターの文章に「個性」はいらないから
実は公務員が役所で書く文章と、ライティングの仕事で書く文章には共通点があります。
それは「個性は必要ない」という点です。
役所の文章が無個性なのはイメージしやすいと思いますが、実はライターの文章も独創性が求められるわけではありません。
何より大事なのは「分かりやすさ・読みやすさ」です。
無理にこなれた表現や難解な語彙などを使う必要はありません。
むしろ読者が途中で読むのをやめてしまう懸念があるからです(Web媒体の場合は特に)。
また、Webライティングの場合はSEOなどを意識した文章を書く必要がありますが、そうすると自然とある種の「型」ができてきます。
その型に従ったうえで、(どんな層の人が読むのかなどを想定しつつ)要点を押さえた分かりやすい文章を書けるかどうかが勝負です。
公務員経験者は、これまでガチガチの「型」にはまった文章を量産してきたため、文章に「個性」を持たせない書き方を心得ています。そのため、同じく個性が求められないライターの書き方にも、わりとすぐ順応できるのではないでしょうか。
ちなみに、「型」にはまった文章を書くという点は、新聞記者とも似ているようです。
記者の文章の書き方については、こちらの本に詳しく載っています。
「記者式文章術」を応用することで、誰でも文章力をアップさせられるというのがこの本のポイントですが、非常にためになる内容なので、文章の書き方に興味のある方におススメです。
以下の記事で書評もしているので、ご関心があればあわせて読んでみてください。
③最低限の社会的マナーが備わっている(人が多い)から
公務員というお堅い仕事を経験してきたことで、社会人としての最低限のマナーが身についている(人が多い)ことも、強みの一つです。
たとえばメールなどでのやり取りのマナーや、締切はきちんと守るといった点などが挙げられます。
「そんなの社会人として当たり前じゃん!」と思われるかもしれませんが、これが結構重要。なぜなら、ライターは参入障壁が低いため、最低限のマナーもわきまえていない人が一部にはいるからです。
文章力と同じく、社会的マナーという点でも、公務員経験者なら最低ラインを突破できるということです。
④「元公務員」という経歴を見て、ある程度信用してくれるから
公務員といえば社会的信用度という点ではトップクラスの職業ですが、公務員を辞めた後もその恩恵をある程度受けられることに気づきました。
どういうことかというと、「公務員やってたくらいなら、少なくてもヤバい人ではないだろう」とクライアント側が思ってくれるからです。
ライターの仕事はオンライン上でやり取りすることが多いため、信用できるかどうか判断に迷うこともあります。
実際に、著しく能力が低い、あるいは社会的マナーがなってない、みたいな人(いわゆる「地雷」)もいる中で、クライアントは信頼できるライターを探さなければなりません。
そこに「元公務員」という肩書を持ったライターがいると、「地雷ではなさそうだな」と相対的に信用してくれるというわけです。
公務員の社会的信用度をあなどってはいけないですね(笑)
おわりに―ただし、例外はある―
今回は「公務員の経験はライターの仕事に生きる」というテーマで書いてきました。
ただし、ここで書いた内容は一般論を意識しているものの、僕の経験も踏まえているので、当然例外はあるでしょう。
たとえば元公務員でも、文章を書くのがどうしても苦手/嫌いという人や、(少数ですが)社会的マナーが備わっていない人もいます。
とはいえ、どちらかといえば上に挙げたような強みを持っている人が多いと思うので、その強みを存分に生かしていきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。