地方公務員、特に都道府県や政令指定都市の職員の中には、難関大学出身の人がたくさんいます。
地元の国立大はもちろん、早稲田や慶応、旧帝大卒の人も珍しくありません(中には東大卒の人も)。
では、学歴の高い人ほど仕事もできるのでしょうか。
今回はこのことについて考えてみたいと思います。
学歴なんて関係ない!
県庁で働いた経験から言うと、学歴の高さと仕事のできる・できないは関係ありません。
高学歴だけど仕事のできない人(もしくはやる気のない人)は普通にいますし、高卒で優秀な人もたくさんいます。
高学歴で仕事のできない・やる気のない人がいるのはなぜなのでしょうか?
以下では地方自治体という組織の特徴も踏まえつつ、解説していきます。
要因① 余計なプライドを持っていることがある
高学歴ならではの要因と言えます。
特に、出世コースから外れるなど、不本意な人事異動に見舞われると、こうなってしまう恐れがあります。
こんな誰でもできる仕事、なんで俺がやらなきゃいけないんだ!
なんてことを思っているかもしれません。
当然、こんな意識では仕事に身が入りません。
早晩、「仕事のできない人」、「やる気のない人」というレッテルを張られてしまうでしょう。
昨今話題の「働かないおじさん」も、こうして出来上がるのかもしれません。
ただ、これは役所に限らず、どこの組織でもよくあるパターンだと思います。
要因② コミュニケーション能力が低いことがある
高学歴の人の中には、一部ですがコミュニケーション能力に難のある人もいます。
もちろん、普通は学歴とコミュニケーション能力は関係ないはずですが、公務員に限って言うと、コミュ力に難のある人は高学歴である場合が多かった記憶があります。
出先機関にいたとき、よく来客とトラブルを起こしてしまう職員がいましたが、某有名私立大(の難関学部)を卒業しているとのことでした。
本庁時代にも、ちょっとコミュ力に難のある東大卒の同僚がいました(決して悪い人ではなかったのですが)。
おそらく、ADHD(発達障害)だったのではないかと思います。
ちなみに、僕も出先機関で働いていたとき、ADHDなのではと少し疑われたことがあります(汗)
その後、ADHDではなくHSPであると判明しました。
※当時のエピソードと絡めつつ、ADHDとHSPに関する本を紹介した記事も書いていますので、よければご覧ください↓
高学歴でコミュ力が低い公務員がいる背景には、あとで述べるように採用試験の方式が関係しているのかもしれません。
要因③ 自治体の仕事の特性
①や②の問題とも関連しますが、地方自治体の仕事の多くは地味、もっと言えば泥臭いものです。
例えば税金の徴収をしたり、申請のとりまとめや審査をしたり(その過程で細かい聞き取りや実地調査をしたり)、といった感じです。
住民説明会などで、住民にあれこれ文句を言われながら、頭を下げてお願いをすることもよくあります。
余計なプライドを持っていると、地味な仕事を嫌がる傾向がありますが、自治体ではこうした仕事が中心なので、不満を持つ高学歴の人が出てきてしまうのかもしれません。
また、コミュニケーション能力が求められる仕事も多いため、コミュ力に難のある人=「仕事のできない人」というイメージがついてしまいます。
では、私のあふれんばかりの知識を生かせる業務はないのかね?
もちろん自治体にも、高学歴な人の知識や頭脳を生かせる業務はあります。
代表的なのはいわゆる企画・立案的な業務でしょう。
議会の答弁や幹部へのレク(説明)資料の作成など、「書く」系の業務もそうかもしれません。
また役職が上がるほど、政治・経済・社会など世の中全体の動きを読みながら、自治体としてどのような施策を採るべきか考え、判断する能力が求められます。
しかし、そうした業務を担うポストは、決して多くはありません。
しかも、広範な知見や高い専門性が必要なポストほど、国から出向してきたキャリア官僚が就く傾向があります。
そのこともあって、希望する業務と現実の業務のミスマッチが起きやすいのでしょう。
初級職と上級職の業務内容にそれほど違いがない背景には、こうした要因が関係しているのかもしれません。
地頭の良さはほとんど変わらない
さらに言うと、高卒や大卒、さらには大学院卒の人の間で、(仕事をこなす上での)地頭の違いはほとんど感じませんでした。
ここで言う地頭とは、「理解力」、「事務処理能力」、「適応能力・柔軟性」といったところです。
これらは当然、仕事の能力に直結します。
もちろん地頭には個人差がありますが、(地方公務員に関しては)学歴との相関はほとんどないのではないでしょうか。
特に「適応能力・柔軟性」 に関してはそういえると思います。
これは完全に推察ですが、高卒の公務員の中には、それなりのレベルの大学に入れる学力がありながら、家庭の事情などの要因で、高卒後すぐ働く必要があった、という人もいるのかもしれません。
採用方式にも問題が?
以上のように考えると、採用方式にも改善すべきところがあるのではないか、と思えてきます。
つまり、特に上級の採用試験で座学(筆記試験)を重視しすぎているのではないか?
もっとあからさまに言えば、お勉強はできても他の能力(特にコミュニケーション能力)が低い人や、プライドばかり高い人を採りすぎているのではないか、ということです。
改善策として、専門試験の必要な上級の採用枠を減らし、面接などを重視する採用枠を増やすか、もっと大胆に就職氷河期世代の採用を増やしても良いのでは、と個人的には思っています(氷河期世代の採用に関しては、今度改めて取り上げたいと思います)。
まとめ
今回の記事をまとめると以下のようになります。
- 学歴の高さと仕事の優秀さは関係ない(少なくとも地方自治体の仕事に関しては)。
- 自治体の仕事の大半は地味なもの。そのため、高学歴特有のプライドの高さが邪魔になることすらある。
- コミュニケーション能力に難のある高学歴の公務員も結構いる。
- 仕事をこなす上での地頭の良さと学歴も、ほとんど関係ない(ただし、たまに例外はある)。
- 筆記の専門試験重視の採用方式に問題があるかも。
なお、最後につけ足しておくと、高学歴でかつ優秀な人は、ほとんどの場合、地味な仕事でも腐らずに一生懸命やっています。
かりにプライド高い系の高学歴の人が重要なポストに就けたとしても、良い仕事はできないのではないでしょうか。
なんだか優等生的な締め方になってしまいましたが、今回はここまでにしたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。